やっと会えたね!


(illust*ナカムラ様/text*水那様)

「〜♪」
小さなケーキに、一つずつホイップを乗せて。
竜の間、セルザの鎮座する前には、たくさんの料理が並んでいた。
「しかし、なんで急に、『みんなに料理を振舞う!』など言い出したのじゃ」
「だって、普段みんなにはお世話になってるもの」
目の前の誘惑に揺れるセルザに、フレイは追い討ちをかけるようにデザートを並べていく。
「まだ食べちゃダメだよ?」
「な、わ、わかっておるわ!」
ギクリとしたように首をすくめるセルザに、クスリと笑みをこぼした。

広場の方から、話し声がする。
『アー、腹へっター!』
ダグの叫びにクスクスと笑いながら、スープの上にバジルを散らして。
「これで全部かな?」
長いテーブルを一回りして確認すると、よし、とエプロンを外す。
そして一度だけ伸びをすると、みんなが待つ広場へと駆け出した。

「みんなー! ごはんですよ!」



ついに明日!


(illust*もち様/text*水那様)

「く、くすぐったイ……」
眉をしかめて必死に耐える。その姿すらなんだか可愛く思えて、フレイはダグの頭をさらに大きく撫で回した。

突然ダグの頭に猫耳が生えた。その話はあっという間に広がって、雑貨店はちょっとした騒ぎになっている。
「いやぁ、人に猫耳が生えるなんてすごいことだが!」
「これだけ立派なら他の猫ちゃんも寄ってきそうですよね〜」
「身軽なバカにはお似合いだな」
「僕も猫耳が――
みんな好き勝手に話をする中、ダグに近付いてきたのは鍛冶屋の主。
「大変みたいだナ」
「バドのおっさン。もう散々だゼ」
「まあ、原因も分からないなら、気長に待つしかないナ」
と、それまでずっと頭を撫でていたフレイがバドを見る。
「あれ、でもバドさん、これってバドさんの発明の影響ですよね?」
二人のドワーフは固まった。

「……フレイ、そういうのは大人の秘密って言うんだヨ?」
じゃア、と片手を挙げて立ち去るバド。呆然と背中を見送った猫耳被害者は、はっと我に返った。
「……おい待ておっさぁぁぁァァン!!」
もの凄いスピードで出て行ったダグに、「さすが猫だな」と誰かが呟くのが聞こえた。



2日前!


(illust*しのぶ様/text*水那様)

赤い髪を捜して、町を半周。ようやく見つかった後姿に、フレイは声をかけようと近寄った。
「おーい、ダグー……って、あれ?」
近付いて、彼のすぐ傍に別の人影があることに気付く。
「ディラス?」
距離で声は聞こえなかったが、普段喧嘩ばかりの二人が、珍しく何か話しているようだった。

「よぉダグ、お前もついにスポットが当たる時が来たかよ」
「アー、おかげさんでナ」
「よかったなぁ、おめでとうな……?」
「オウ、サンキュー」

「二人、何話してるんだろ……」
普段険悪な二人だ、話をしてるのはいいことだけど、あまりいい雰囲気には見えなくて不安になる。
「ヤレヤレだナ」
頭上から聞こえた声と、肩に置かれた手に、声の持ち主を振り返る。
「アイツらにも、譲れないモノがあるんだヨ。青春ってヤツだナ」
ちょっとだけ呆れた感じを出しながら、バドは小さく息をついた。



3日前!


(illust*るー様/text*らに)

ダグ「おい……オッサン……」
バド「ンー?」
ダグ「その配役は、ファンに怒られるんじゃねーのカ……?」
バド「いやいヤー。ピッタリじゃないカ。なんかなんとなく……青いシ」
ダグ「青いだけじゃねーカ!!」
バド「そっちも怒られるんじゃないのカ?」
ダグ「怒られるにしても、オッサンほどじゃねーヨ!ほら、なんかなんとなく……赤いシ!」
バド「…………ソウダネー」
ダグ「そ、それに、オレは歌もちゃんと歌えるゼ?」
バド「中の人ネタはどうかと思うなア」
ダグ「そういうこと言うなヨ!言わなきゃバレねーヨ!」
バド「よし、しょうがなイ。オレの歌を聞かせてやろうじゃないカ」
ダグ「お、オッサンも歌えるのカ……って」

♪〜 ボ工エエェェェェエエ工工〜 ♪

ダグ「今すぐヤメロオオォォォォオオ!!!」

フレイ(2人とも、楽しそうだなあ♪)



4日前!


(illust*深夜徘徊02様/text*らに)

「へー、今までのとちょっと違うんだナ。でも、すっげーうまイ!さすがフレイだな!」
「良かったあ。ダグって、がつがつ一気に食べちゃうのに、細かい味の違いまで分かるんだね?」
「そりゃ、ウマイモンは味わって食ってるからナ!……まあ、特にそのホラ……オマエの作った飯だシ……」
「?」

ごにょごにょと消え行くダグの声を遮って、フレイは「あ」と呟いた。
窓の外をチラチラと不審な動きでかすめていくのは、天丼レシピの改良を手伝ってくれたポコリーヌさん。
(うまくいきました!)
小さくサインを送る。

「ン?どしタ??」
「何でもないよ!もう一杯食べる?」
「おう、もちろン!」
もう一度そっと、窓の外に視線を送ってみたけれど、どうやら満足したらしい不審な人影はもう消えていた。

 


5日前!


(illust*黒蝶様/text*らに)

「おーイ」
「…………」
「フレイー」
「……………………」
「んー。参ったなア」
毎日元気良く走り回る、思いの外小さな体。
起こすか、ベッドに運ぶか、それとも。
いつも通りのんびりと考えて、そしてのんびりと結論を出す。
きっと彼女にも、休息が必要だから。
「まあ、いいカ」
このままで。

暖かな眠りの中の彼女には、この優しさは気付かれないから。
大きな固い手が、柔らかな髪をふわりと撫でた。

 


6日前!


(illust*いぬじ様/text*らに)

「わあ!見てくださいバドさん!寒くて、窓に絵が描けちゃう!」
「あぁ本当ダ。今日はもう店は休みだなア」
「もう、ダメですよ。きちんと働いてください!」
そう言いながらフレイさんは、ゆっくりと丁寧に、窓に文字を書きました。
「……6日?6日に何かあるのカ?」
「ええと、ですね……大切な日まで、あと6日、なんです」
「なるほド。」
じゃあ、とバドさんは、やはりゆっくりと丁寧に。
彼女よりも少し高い位置に文字を書きました。
「これがないと、分からないだろウ?」
『あと6日』
2人で書いた透明な文字に、フレイさんの微笑みが零れます。
……この文字はすぐに消えるけれど、大切な日はもうすぐ訪れるから。

 


7日前!


(illust*さな様/text*もち吉)

ダグ「……」
フレイ「……」
ダグ「…………」
フレイ「…………スゥ…」
ダグ「…(動けねェ…)」
フレイ「…う…ン…」
ダグ「…ッ!」
フレイ「…ぐぅ」
ダグ「…フゥ…。そろそろ寒ィから布団で寝ろヨー」

 


8日前!


(illust*しのぶ様/text*もち吉)

ダグフレごはん!ごはん!

ダグ「今日の飯はなんダ〜♪」

バド「なんダ〜♪」

ダグ「ゲッ!オッサンも一緒なのかヨ!」

バド「まぁまァ〜固いことは言わずに三人で天丼でも食おうじゃないカ」

ダグ「なんでもう食ってんだヨ!ア!オッサンちけぇヨ!フレイから離れロオオオ!」

 


9日前!

(BYもち吉)

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